コラム

 公開日: 2017-11-25 

なぜ暖房をしてもしても暖まらないのか

今年もついに本格的な冬を迎えようとしています。
日本の住宅はまだまだ全般的に寒く、ほとんどの方が朝方10℃を下回る室内で暮らしています。
一方、ぬくぬくと20℃~22℃の屋内気温の中で暮らしている人もいるので、これは”温熱格差”と呼んでいいのではないでしょうか。
金持ちは有名なハウスメーカーで家を新築できるから、益々温熱格差が広がるのではないのか?
暖かいくらしは金持ちにしか手に入れられないのではないか?

しかしながら、新しい家はみな暖かいはずだと思ったら大間違い。

「新築したばかりなのに、うちは全然暖かくない!どこかに欠点があるに違いない!」
「暖かいにはあたたかいが、暖房コストがものすごい!」

残念ながらそういった相談もこの時期に多く舞い込んできます。
暖かく暮らせる家かどうかの分かれ道は、下記の2点が最大のポイントです。

第1に気密性
第2に気流止め

そしてその2点は異なることのように見えて、実は深く関連しています。

ふつうにつくるとダメなんです

言わずと知れたことではありますが、隙間風があるような家では暖かいはずがありません。
一見すると隙間などどこにもないように見えますが、隙間が全くない家など1軒もないのです。
どんな工法でつくっても、
どんなに丁寧に隙間をなくそうとしても、
どうしても隙間ができてしまいます。

・床 巾木まわり
・窓まわり
・コンセント、スイッチまわり
・換気扇まわり

壁そのものにも当然隙間が少なからず存在します。しかしビニールクロスが張られている現代の住宅では、家を寒くするような大きな隙間(穴)があるはずもありません。


住宅金融支援機構発行の仕様書
床の巾木廻りの隙間は、床下の空気が壁の中に入り込んでいる危険性があり、最もよくない隙間の一つです。
木造在来工法の最大の欠点といっていいくらいです。
「床下の空気を壁の中に絶対に入れない」
そう心がけて家をつくっている大工さんが一体どれくらいいるでしょうか?
上の図は、住宅金融支援機構(旧住宅公庫)が発行している木造住宅工事仕様書から抜粋しました。
公庫仕様書といえば、昔から工務店ではバイブルとして扱われ、記載されている仕様で造れば盤石のいわば教科書です。
しかしながら、このやり方でつくると赤い→の流れで、床下の空気を壁の中に取り込んでしまうという欠点に気づいている人はそうは多くないのではないかと思います。
つまり、
「木造軸組み工法は、標準的に作ると必ず床下冷気を壁の中に取り込んでしまう」のです。
結果床と壁の接点、つまり巾木付近から床下冷気が一部放出されるように作られていることに、あの方々はだれも気付いていないのです。

これを解決するには、工法に一工夫をして、先張りシートを張ってから床組みをつくったり、床を先に作って蓋をしてから壁をつくるなどの手法で解決ができます。

気密性のことを深く考えてつくる勉強家の大工さんはそう多くはないと思うので、私たちのような建築士が気密工法として、設計図に落とし込むべきだと考えています。


床下で見える断熱材
気流止めなし状態

すでに旧来の工法で造られてしまっている場合は、
・床下に潜って、この隙間を埋める
・外壁の下の方をいちど剥がして、この隙間を埋める
・床の一部を一度剥がして、この隙間を埋める
ということが考えられ、この作業のことを「気流止め(きりゅうどめ)」と呼んでいます。


押入れ内で結露・カビ
暖房すると足元がスース―する、コンセントやスイッチのところからスース―と風が出てくる、
押入れの中の壁の下の方が結露している、カビが生えている、
クロスの壁に数年もしないうちにカビが発生、継ぎ目がはがれていている、
という場合のほとんどが、「気流止めがないから」なのです。


窓廻りは窓の性能によりますが、現在発売されているサッシのほとんどは気密性が高くなっています。
しいて言えば、日本で主流の引き違い窓は、ドア的動作で締まる窓に比べれば気密性が劣ります。隙間を減らすためのパッキンも随時擦れて摩耗してゆきます。引き戸であるがゆえに戸車と呼ばれる車輪がついていて、レールの上を走っているわけですから、隙間がないと動きませんから。

コンセントやスイッチプレートからの隙間風は、前述の巾木廻りの隙間と関連しています。
床下からの空気が壁の中を通って、一部巾木廻りで放出するも、またある一部の冷気は壁の上へ上へと抜けているのです。大きくない隙間といえども、冷たい空気は暖房しようとしている部屋に容赦なく入ってきます。暖房をすればするほどこの床下から壁内に走る冷気は促進され、いつまでたっても暖房し続けることになるのです。


換気扇まわりは、当然といえば当然ですが、空気を出入りさせようとしている箇所ですから隙間があります。
ただし、運転を止めた状態で外の詰めたい風が入ってこないような仕組みの物が現在では主流です。


気密測定
気密性は測ることができます。
専用の機械と有資格者による実測によるのですが、換気扇のような意図的な隙間をテープなどで目張りしたうえで、
1か所、ものすごい勢いで室内の空気を外に排出します。このとき室内の気圧が下がります。
外から家の中に、空気が入り込もうとします。このときの圧力の下がり方を機械的に分析して、
「この家にはこのくらいの隙間があるはず」
という値がコンピューターによって表示されます。
専門用語で、C値(しーち)といいます。隙間相当面積といい、家全体の推測隙間面積を床面積で割った値です。
だから単位はcm/ ㎡。ここではcmという単位がでてくるので、建築はムズカシくなります。

C値は小さければ小さいほど隙間が少ない、ということになりますが、高気密と呼ばれる建物の場合、C値=2.0以下であることが前提となります。
寒い家のほとんどは、C値が5~10なんていうこともざらにある一方、
隙間をなくそうと工法を工夫したり、気密処理の作業を丁寧に行う事で、C値=0.5以下なんていうことも可能です。
本来は一棟ずつ実測すべきですが、日本では残念ながら測定義務はありません。

建物に隙間が無ければないほど、当然優秀な家と言えるのですが、
C=0.0は不可能ですし、コストも手間もかかります。
わたしは、実生活に支障のない範囲として、C=2.0以下はマスト、期待値C=1.0以下と定めて、自ら手掛ける全ての新築住宅は測定しています。

この記事を書いたプロ

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塩原真貴

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TEL:026-274-5485

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