コラム

2015-07-17

体感温度と快適な室内環境・省エネ性

先の法改正を機に室内環境の向上や省エネ性能の高い家に関心が高まっているように感じます。おなじように「暖かい家が欲しい」というご要望も以前より多く聞くようになりました。
今回はこの「暖かさ」について考えてみたいと思います。

「暖かい」「寒い」という表現は、単に感覚を伝えるには分かりやすい言葉ですが、個人的主観的に表現される場合が多く、客観的に度合いを比較する場合の目安にはなりにくいでしょう。

例えば、「冬暖かい家を建ててください」「我が社の家はとても暖かいです」と表現しても、暖かさの内容をつかみ難い(伝わり難い)ということです。
また、単に「室温」を上げるだけなら、暖房の設定温度を高くすれば良いだけのことです。
肝心なのは、同時に消費エネルギーの少なさや、快適さも伴っているかということになると思います。

室温など温熱環境を客観的に評価・比較する場合には、温度(℃)で比較することが多いのですが、より質の高いレベルで比較する場合は、体感温度の考え方を用いるのが効果的です。

温度と体感温度の違いは、前者は物理的な温度なのに対し、後者は人が感じるであろう温度を表します。 住む人にとって環境の良し悪しを判断するには、物理的な室温にのみによるのではなく、通常体感温度で評価されています。つまり、通常人の肌で感じる「暖かい・寒い」こそが体感からくる感想(体感温度)なのです。

人の肌に感じる体感温度は主に、室温、放射熱、気流(風)などの要素からなっています。
(体感温度の要素は他にも、着衣の状況、運動量、湿度など多くの要素があります)

外気温氷点下と寒い時、空調設備のない天井の広い大きな体育館の端っこで薪ストーブを炊いているとします。ストーブの近くにいるときはそこそこ暖かいのですが、ストーブの熱の届かないところでは、主に体育館の室温(空気の温度)だけが肌に感じるので寒く感じるでしょう。これがストーブの熱が放射熱という形で体感温度に影響していることの例です。

この体育館の真夏で外気温30℃以上の暑い時、ストーブの代わりに大きな氷の塊を置いてみます。氷の近くでは涼しく感じます。氷から遠く離れると氷の冷放射が届きにくくなるので、室温そのものが肌に感じます。
そこで扇風機の風にあたるとすぐに涼しくなり、風にあたり続けるとやがて寒さを感じるようになります。

このように、「暖かい」「寒い」「涼しい」「暑い」は体感温度そのものを感覚的に表現した言葉です。
また体感温度に影響する要素は、室温、放射熱、気流などがあり、室内温熱環境向上のために欠かせない重要な要素となります。

さて室内環境において放射熱はどこからくるのでしょうか。最も分かりやすいのは窓です。次に天井・壁・床などです。部屋を構成するすべての面から放射熱は発せられることになります。それは外気温・室温・断熱仕様などによって放射熱の温度が違ってくるので、放射熱(体感温度)の観点からも住宅の断熱性能は重要になってきます。


窓のガラス面(室内側)などのから直接放射される熱は、単板ガラス(1重)の場合は外気に近い温度が室内側に放射されるわけです。その放射温度が冬期など室温より低い場合(冷放射)はその時の室温より低い体感温度となり、その放射温度が夏期など室温より高い場合(暖放射)は体感温度がその時の室温より高くなります。

また窓ガラス面から冬期間冷放射がある場合はエネルギー損失が生じています。つまり窓ガラス面が室温に近いほどエネルギー損失が少ない状態と言えます。ペアガラス(2重)トリプルガラス(3重)と段階的に向上するのは言うまでもありません。
そして、外気温の影響を受けにくい冬暖かでかつ夏涼しい基本性能の家は、同時に省エネ性能も備えていいる場合が多いといえます。


さて、「暖かい家が欲しい」という最初の話に戻ります。
「暖かい」とはどのような室内環境を目指せばよいのでしょうか。もちろんご家族それぞれライフスタイル・価値観が違いますので一律にとはいきませんが、現在環境先進国をはじめ世界共通の課題である、エネルギー問題と環境問題に向き合う姿勢は保ちたいところです。
そうなると、寒くない程度にできる限り省エネでという目安が見えてきます。寒くないという環境は、季節でいえば春と秋がこれにあたります。気温でいえば18℃〜22℃くらいになるのではないでしょうか。もう少し暖かい方が良いと思われるなら、1〜2℃程度高めに設定してみるのも良いでしょう。

先ほど確認した体感温度をいかし、体感温度で20℃ ± 2℃という目安を設定したとします。理想をいえば、室内温度、壁・天井・床・窓ガラス面すべてが20℃ ± 2℃であれば完璧です。
しかし冬季間に室温と窓ガラス面の温度が同じというのは現実的には厳しいものがあります。できるだけ近づけるということになるでしょう。そしてその場合、窓ガラス面温度が室温より数度低いので、「室温より少し低い体感温度になる」ことを考慮する必要があります。窓ガラスの断熱性能が低い場合は放射温度がより低くなり、体感温度も低い方向にひかれることになります。

いずれにしても、シーズン通して室温を1℃温度を上げただけでもエネルギーもそれなりに消費します。室温と外気温の温度差が大きくなるほど建物への負荷も増します。
室内温度をなるべく抑え、環境に優しく建物への負荷もできるだけ軽減することができるのなら、薄手の衣類を1枚多く着て過ごすことを考えてみるのも良いかもしれません。
できるだけ周囲に無理のかからないエコな家とエコな暮らし方で暖かな室内環境を実現できること、イメージして頂けたでしょうか。


体感温度の考え方

※図は、平均輻射温度による体感温度の考え方を簡素化し示したものです。
右にいくほど体感温度は高くなり、同時に快適度も高くなり、さらに消費エネルギーも少なくなっています。
押し並べていうと、断熱性能が高い家ほど、快適度が増し、かつ省エネ性能が高いそして、体感温度も高くなるといえます。

この記事を書いたプロ

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建築家 小野治

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